晴れたり曇ったり

毎日空を見て暮らしています。良い天気の日もあるし曇ったり荒れたりする日もあるし、日々繰り返し。

日活旧作「素っ裸の年令」 主演 赤木圭一郎

 昨日久し振りに映画を観る。出掛けたのではなくAMAZONのプライム映画。最近はもっぱら日本映画の旧作に注目。タイトルをスクロールして見たいものを探すと東映と日活に面白そうな作品。

 東映の方は有償だったので日活作品をクリック。「素っ裸の年令」という微妙な題名、1959年の製作。上映時間が54分と短かく夕食の時間に間に合いそうだったのも選んだ理由。

 監督、脚本、主演、始まってクレジットが流れると目を見張ります。監督脚本は鈴木清順、主演、赤木圭一郎。カッコして(新人)とありこれが最初の主演作だと判る。

 映画が始まって当時昭和34年の街角風景、通勤時なのか車とオートバイ、自転車がが商店街の前を流れていく。第一銀行の看板(その後第一勧銀)。

 オートバイがもう一つの主役、もうすぐ二十歳を迎える若者がリーダー、ローティーンの男女6.7人。リーダーの兄貴に惚れてる妙齢のねーちゃんと、飛行場端っこのカマボコ兵舎跡に潜り込んでいる。

 彼らはオートバイを掻っ払い、街道でスピード勝負をして負けた側から金を脅し取ったり無人売店から盗んだり、その金は仲間で山分け、それぞれの思いを抱いて兵舎に集まり暮らしてる。

 登場人物の中に左卜全。犬を連れ変なビッコを引きながら現れる屑拾いの浮浪者風。不良少年たちに微笑みながら語り掛けるのは覚者でもあり仏の化身にも見える。救いようのない結末に添えた悟り。

 初井言栄がサブという中学生不良の母親役。サブは実は級長で高校進学を望むけれど貧乏で親は中学を出たら働けと突き放してる。だからサブは金が欲しい。

 そうして貯めた金を母親はサブのポケットから抜き取ってしまう。そんな極貧の生活、甲斐性のない父親、父親を毒づく母親。このシーンで目が行ったのは初井言栄のおっぱい、デカかった。

 あの頃は乳バンドなんて着けなかったから粗末な上っ張りに包まれたオッパイ、傍らで赤ん坊を父親があやしてたからそんな年齢の設定であったとしても、いや昭和34年当時の彼女は若かったんだ。

 1929年生まれだからこの時30歳だった。自分の中ではおばあさん役のイメージが強かった所為もあって、息子にキツい小言を云う母親役のオッパイに思わず目が行っちゃった。

 

 さて赤木圭一郎、オートバイでの爆走シーン、といって当時の道路事情、交通事情では爆走とまでは云い難いけれど体を伏せて数台で追い駆けっこ。

 このバイクが何か、非常に興味があって見続けるんだけれどよく判らない。画面が鮮明ではない事と写るアングルが悪くてメーカーが断定出来ない。

 映画冒頭、第一銀行が映ってる場面では走っていくバイクの中にホンダの125、ベンリー号のスポーツタイプがあった。アップマフラーのCS92というバイク。

 これは格好も良かったし性能も良かった。でも兄貴が乗ってるバイクは白煙吐いてる2スト単気筒。当時2ストはホンダの4スト2気筒に性能で差を付けられていた。

 ヤマハ、スズキの2スト勢も負けじと台頭してきたけれど映画のバイクはこの2社製ではない。ヒントは辛うじて映るタンクマーク、あとで確認したけれどこれはトーハツ、250ccのハリー号。

 この頃日本国内にはオートバイメーカーは100とも200社ともあってホンダの台頭以後淘汰が始まってた。トーハツは商用の少量荷物運搬ツールとして大いに売れてたけれどやがて行き詰まる。

 販路拡大に50cc原付のランペットというバイクを発表。これはデザインも良くスポーツタイプのCA2というのも出して評価は高かった。

 レースにも進出し海外へも出掛けたけれど資金詰まりとなり今はマリン関係や消防用ポンプのメーカー。映画とは関係ない話だけれど良いバイク作ってたのに消えたバイクメーカーへのオマージュ。

 映画の爆走シーン、アフレコでしたね。2スト煙出しながらのエンジン音は4ストだった。あの頃は分離給油という機構がなくて2ストはガソリンスタンドで混合ガソリンを指定して入れてた。レギュラー50円/Lで混合は60円/Lだった。

 
 物語は進んで主人公の兄貴、赤木圭一郎はやばい仕事に手を出し100万円をせしめる。持ち帰った兵舎で山分けをするかと思ったら10万円だけ渡しここを出て行くと裏切る。

 彼には彼のしたい道があっておねーちゃんの思いも切り捨て故郷へ向かう。悔しかったら俺に勝ってみろと捨て台詞。サブ達はオートバイで兄貴の後を追い崖沿いの公道レース。

 追いつけず兄貴が勝ち誇って後ろを振り向いたところで石に乗り上げ崖下に火を噴きながら転落。赤木圭一郎デビュー作は格好良いエンディングではなかった。

 

 この後彼はデビューして1年半後に撮影所内でゴーカートに乗って事故死しちゃう。同じくポルシェで事故死のジェームスディーンにも擬せられて伝説となってしまった。このシーン、暗示的。

 鈴木清順という監督はやはり変わった監督だったんですね。「東京流れ者」でも日活と悶着起こしてるけど経営側の意向に構わず売れ筋の定番作品は撮らない。

 おかげでこんな昔作品でも、監督はなんでこういう展開にしたのかとかそれぞれの視点からの評論を楽しめる。監督は意図してないだろうけれど自分的にはオートバイの時代背景を講釈しながら昔に浮揚出来ます。

 

若い頃は、ハッキリ云って日活の青春映画なんて馬鹿にしてたけれど、年取ってみると映画の中のあれやこれや色々と楽しめます。