暮れの買い物に正月用の日本酒を買う事になって清酒の棚をあれこれ探した折り、にごり酒が目についてどんなものか判らないから2合瓶を一本買い求めた。
白川のにごり酒とラベルにあるけれどこれは白川村近辺で作られたものではなく酒造元は大垣の酒蔵。実はこの事中日新聞の経済欄を読んで知っていた。
白川村で行われるどぶろく祭り、古い来歴があって毎年秋に行われ参拝者には村で作ったどぶろくが振る舞われる。
しかしこの酒はこの日の為に許可をもらったもので期日中に村内で消費して終わる。これを村の特産にと考えた白川村と手を挙げた大垣の三輪酒造が開発したお酒。
製品化するまでには苦労もあったと新聞記事にあって、菌の処理をしていないどぶろくは放っておけばすぐ酸っぱくなってしまう。
この事には思い出があって、もう50年も前の事だけど、会社の寮に一緒に暮らしていた同僚、彼は青森の十和田出身だった。
その彼が時々夜中にごそごそしている。どうやら瓶を取り出してちびちびやっていた。見て見ない振りしてたけど少したってこれあげるとその瓶を差し出した。
サントリーのオールドの瓶だった。ウイスキー飲むんだったら別にコソコソする事なかろうと思ったけれど中身はウイスキーじゃなかった。
日本酒だった。一口飲んで、少し酸っぱかったけど当時のインチキ2級酒が当たり前だった清酒からすると口に含んで香りと旨さが口内に広がった。
なんだこれはと尋ねると、自分ちで作った密造酒だという。当然ご法度だけど戦前戦後を通じ田舎じゃ当たり前に行われて事のようだ。
酒を醸すと良いにおいがする。酒を造ってるとバレてしまう。そこは屋根裏に隠したりうまくやってたようで東京へ出た息子に送って来たという事。
その酒は確かに少し酸化が進んでいたけれどその時初めて日本酒の美味さってものを知った。今は1級酒、2級酒の区別はないけれど、特級酒だってあんなに旨いものだとは思わなかった。
彼は酸っぱくなった酒だから自分に呉れたのだけど出来たての酒だったらどんなに旨かった事か、以来その酒を飲んでみたいと思っていたけれど以降叶わず。
そのあたりから純米酒というのが流通し始めて、これは週刊朝日で知ったのだけれど佐賀に「窓の梅」という純米酒があると書いてあってそれを探した。
意外と近くに「窓の梅」を扱う酒屋があって早速購入、飲んでみるに確かに日本酒はお米から出来ているんだという香りと味があった。
高田馬場に「窓の梅」の看板がかかった酒場も見つけた。しかしあの少し酸っぱくなった密造酒の美味さに敵う清酒はその後味わえていない。
「白川郷」というにごり酒は火入れをして酸化は防いであるだろうけれど濾していないから白い澱が残っている。それが邪魔にはならないとはいえ清酒の喉後ごしとは違う。
麹の甘酒にアルコールが加わっているような、冷たくして飲むと美味しい。だからつい飲み過ぎてしまう。アルコール度は清酒と同じほどの度数がある事を忘れると酔っぱらってしまう。
正月のお屠蘇用の清酒は別途購入。今は香り芳醇な吟醸酒が各醸造元から出ていて迷うけれど燗酒派の自分にはお屠蘇はおちょこ2杯程度あれば十分。
あとは燗にして飲みたいから、本当は台所の紙パック酒で良いんだけど、一応越乃寒梅を買って来た。寒梅も一時高騰したけれど安く手に入るようになったね。
寒梅はアルコール添加で純米酒じゃないけれどスッキリして飲みやすい。更にこれは自分だけの感想だけど燗酒にして飲むと非常に美味しい。
家人が新潟で、田舎に帰った時親戚の男衆にそう云ったら変な顔をされた。大体日本酒は冷で飲むのが普通らしい。それとあちらでは寒梅は別に有り難がられていない。
それで正月、夜ににごり酒「白川郷」1合ほどと「越乃寒梅」燗で2合ほどを呑んでしまった。歳とってからは缶ビール350ml1本が定量なのについ呑み過ぎ。
ま、おいしいから仕方がないね。本当はもっと呑みたかったのだけど翌朝の二日酔いを考えたら流石にブレーキがかかった。
今朝は曇り空。これは昨日朝6時半の夜明け前