旧作日本映画、日活作品「西銀座駅前」１９５８年製作、「有楽町で逢いましょう」という歌謡曲がヒットしたフランク永井が続いて出した曲、その映画化。
昭和３０年代初め、フランク永井は多くのヒット曲を出した人気歌手。まだ自分は小学生だったけれど幾つもの歌を覚えてるし今も口ずさめます。
夜霧に消えたちゃこ、夜霧の第２国道、東京午前３時、羽田発７時５０分・・そのあとに大阪シリーズが続いてこちらも懐かしく思い出します。
「西銀座駅前」という曲は、地下鉄丸ノ内線に西銀座駅が開業しその上にデパートができてそれが西銀座デパート。と言って地下２階地上２階の小ぢんまりしたアーケード風。
ここが開店してその宣伝を「有楽町で逢いましょう」のヒットにあやかって作られた云わばタイアップのＣＭソング、という記述をどこかで見た覚えがあるんだけれど、検索してもその話は見つからない。
佐伯孝夫作詞、吉田正作曲、歌詞読めばもうモロにこれは西銀座の宣伝ソングでしょう。
ＡＢＣ ＸＹＺ これはおいらの口癖さ
今夜も刺激が欲しくって メトロを降りて階段昇りゃ
霧に渦巻くまぶしいネオン いかすじゃないか 西銀座駅前
その上でこの映画が作られた。映画までがタイアップなのかどうかは知りませんが初代デパート社長は銀座三愛の、リコーの、市村清社長。地下鉄駅開業と合わせた複合プロジェクトであってもおかしくはない。
それでこの映画、アマゾンのプライムビデオにあったので拝見。いきなりは飛びつかなかった。少し前に望月優子主演の（子役で二木てるみが出てた）「おふくろ」を見て途中で止めた事があってダラダラ愁嘆場の古くさい演技はおなか一杯。
これは尺が５２分と短い事と喜劇と銘打ってあり監督が今村昌平だったのでクリック。途中阿保らしいなと思う部分もあったけれど結構面白く見ました。
あほらしいと思った部分、主人公は戦争で南洋にて兵役、そこで現地の土人娘と恋したらしい。その幻惑が時々襲ってくるという設定。予算の問題なのかその妄想シーンがチャチで笑えた。
同時にこの設定はダニー・ケイの映画「虹をつかむ男」（１９４７年）から借りて来てるなと思える。映画は原作小説（ウオルター・ミティの秘密の生活）からかなり外れた脚本になってるけれど、妻の買い物に付き合わされ車の中で待つ間、戦闘中のパイロットになったり医者になったり。
しっかり者の奥さんの尻に敷かれ鬱屈して時々妄想が襲う、この設定は摘まんでますね。頭から命令口調の奥さん、薬局を経営してるんだけれどこれが山岡久乃。あとで水着姿披露してくれる。若かったね。
主人公を演じるのが柳沢真一。この人はジャズ歌手もやってました。池内淳子と結婚してたし、昭和７年生まれで今年９０歳ですか？（wiki見てたら「虹をつかむ男」のダニーケイの吹き替えやってる）
脇役陣に西村晃、小沢昭一、初井言栄、フランク永井も狂言回し役のバーテンや駅員で出演。スタッフの助監督に浦山桐郎の名。
薬局が舞台だからお店には薬のポスター、これが大正製薬。これもタイアップでしょう、薬の名前、便秘にパレンⅮ錠、パブロンＢ、ゼタリケン℃（メモしながら見てた）。
向かいの万年筆屋さん、ここの女店員と怪しくなるんだけれどオネスト６０ってネームが出てきたからこれはプラチナ万年筆。ここもタイアップかな。（万年筆屋さん、岐阜の柳ケ瀬にも専門店があったけれど今はもうない）。
映画の中に日劇の丸い建物が映ってた。日劇には思い出があって、本体の方では映画を数本見ただけだけれどすぐ脇に日劇ミュージックホールの入り口があった。「ヌードの殿堂」
ここで踊り子やってた春川ますみ、今村昌平の映画に幾つか出てますね。「赤い殺意」とか。柳沢真一は池内淳子と離婚した後日劇ミュージックホールの踊り子と結婚してるってwikiにあった。
この映画は日活首脳陣には不評だったらしいけれど、確かに今村昌平が望んで作るような映画ではありませんわね、会社の要望も受け儲かったら自分の作りたい映画を撮る。
師匠は幕末太陽伝の川島雄三だし、同じく不評を被った「「東京流れ者」の鈴木清順も日活だし、映画全盛期にいろんな才能がひしめいてた痕跡を旧作映画から拾い出せます。
ＣＤラックを探したらフランク永井のＣＤが２枚。一枚は亡くなった父親が買ったもの。もう一枚、大阪ぐらし、こいさんのラブコール、大阪ロマンが入ってるから購入したもの。
大阪はよく知らないんだけれど頭の中に自己流大阪が存在してて、フランク永井の唄声を聞きつ２～３分の大阪恋物語を楽しめます。（作詞は３作とも石浜恒夫）
柳沢真一やミッティに限らず男は結構妄想の中に生きて主人公やったりしてますね。してません？
