(昨日のエントリー余聞)
映画はそれなりに観て来たと思うけれど当然好き嫌いもあるしタイミングもある。評判になった映画で見ていないものも沢山ある。
文春文庫に「大アンケートによる 洋画ベスト150」「戦後生まれが選ぶ洋画ベスト100」ってのがあって自分でもベスト10なんてのを作ってみたりした。
これが中々むつかしい。あれもこれも入れたくなるからこのアンケートに答えた人達も悩んだろうし取り敢えず今回だけはと割り切った人もいたんだと思う。
どれぐらい観てたか数えたらベスト100では61本見て39本見てなかった。これはリストの中だけだからこれ以外で良かった映画もある。
例えばジャン・ルイ・トランティニアンとロミ・ーシュナイダーが共演した「離愁」は次の日又観に行ったくらい。
ドナルド・サザーランドと無名だったジュヌビエーヌ・ウェイトの「ジョアンナ」も2回観てる。「MASH」に影響された所為もあるけどサザーランドが良かった。
「洋画ベスト150」の中では監督、女優、男優のベスト10を映画好き著名人が選ぶ企画。男優部門で3位がヘンリーフォンダ。
それを選んだ田中小実昌が彼についての一文を寄せてるのだけれど、ヘンリー・フォンダの名がいっぺんに上がったのは何といっても「ミスター・ロバーツ」だろうと解説してる。
田中小実昌は週刊文春の映画欄の評者で独特な評価の仕方で好きな作家だった。ベスト10と区切ると難しいから20に広げた当時のメモにこの映画は入ってる。
1960年、昭和35年、中学校1年生の時にこの映画は見た。田舎の2番館で一人で観たからこの映画の格好良さを話す友達は周りにいなかったけれどしっかり記憶に刻まれた。
ヘンリーフォンダ演ずるロバート中尉は、こんな輸送船でくすぶってはいられないと前線勤務を申告するがその上申書を艦長に阻止されて鬱屈する毎日。
でも乗組員達は、分からず屋艦長に楯突きいろいろ配慮してくれる中尉が好き、それが面白くない艦長はさらに嫌がらせをする。
そんな中ある行き違いから中尉と乗組員の間がまずくなる、しかしその誤解も解けやがて乗組員の機転、協力で中尉は戦闘部隊の配置に付くことになる。
そして終章。皆に見送られて沖縄に向かう戦艦勤務。中尉の代わりはジャックレモンのパルパー少尉、やがて中尉から元気でやっているとの手紙。
と同時に同じ鑑に乗船していたパルパー少尉の友人からの手紙、「神風特攻機による突撃でロバート中尉死す」。
ここで前回エントリーの戦艦ミズーリの事がオーバーラップ、ミズーリに特攻機が突撃した。この時戦艦ミズーリは沖縄海戦にいた。
ミズーリ号は1945年4月、沖縄へ向けて出航。4月11日、日本軍の特別攻撃機零戦が現れ右舷甲板部に特攻、艦は小さな火災を起こすも消し止め損傷は僅か。
特攻機はミズーリに被害を与えられずにパイロットは死亡。映画ではロバーツ中尉が
・・日本の自殺機によって他の士官共々ロバーツ中尉はコーヒーを飲んでいて殺された・・
と字幕。そして映画は終わる。
映画と実際は違うけれど脚本はミズーリの特攻機被爆を下敷きにして書かれたんではないかと思った。
ヘンリー・フォンダのロバーツ中尉の下にパルパー少尉、これがジャック・レモン。これでジャック・レモンの名を覚えた。
剽軽でバカやって最後は男らしくて、強く印象に残った。これで助演男優賞を獲ってる。
この役はその後スピンアウトして「ミスターパルパー」という映画になってる。主演はロバート・ウォーカー・ジュニア、共演の女優にミリー・パーキンス。
この人はアンネの日記でデビュー、憂いを含んだ瞳が印象的な女優さんだった。この映画も見てるんだけどあまり覚えていない。
DVD売り場でこの作品を発見、即購入。全然古びてなくて笑わせてしんみり。監督は初めジョン・フォードだったが交代してマーヴィン・ルロイ。
艦長役がジェイムス・ギャグニ―、ギャング映画に出て評判をとり以降ギャングスタ―として一世を風靡。
1955年、昭和30年の作品。「ミスター」ではなく「ミスタア」ってところが昭和の名残り。
「離愁」はロミー・シュナイダーの押さえた演技に感じる処があったけれど封切時に評価する人はいなかった。
ところがその年のキネマ旬報で一人だけこの映画をトップに押す評者がいた。矢崎泰久「話の特集」の編集兼発行者。
これを読んだ時は見てる人は見てるんだと我が意を得たようで嬉しかった。ま、人それぞれという事。
良い映画が一杯あって良い映画音楽も巷にあふれてて、思い出も一杯。
今朝方昨夜来の雨が残って、今は止んでる。雨模様が続く。